792 名前:70-431 投稿日:檀君紀年4338/04/01(金) 03:12:35 ID:0bKq7P1Q
以前フィギュア関係の話を投下した者です。
最初休憩所をかんがえたのですが、本スレに投下することにします。
さて。フィギュア用のものに限らず、「金型」というのは非常にデリケートな扱いが
要求されます。
こまめな補修が必要という意味だけではなく、「会社の資産」という意味でも。
なにしろ、金型一つ作るだけでも十数万〜数十万、時には数百万単位の投資が必要です。
このため、プラモメーカーでは、数十年前の金型もちゃんと保管している場合もあります
(数年前、バンダイがファーストガンダムの頃のガンプラを復刻しましたよね?)。ある
いは、減価償却した金型を、海外メーカーに売却することも珍しい話ではありません(タ
ミヤなんかは、古い金型を東南アジアや東欧に売却していたって聞いています)。
さて、「会社の資産」ですから、税務署への申告の際なんかにゃそれが大きな意味を持つ
わけです。
つまり、もう使わない金型であっても、後生大事に抱え込んでいると、それが「資産」と
して計上されて、その分税金がかかります。
よって、使用済みの金型は所定の方法で廃棄しなくてはなりません。
会社や業界ごとに違うのかもしれませんが、うちでは管理者の立会いの下で廃棄(物理破
壊)、証拠写真を添付の上で廃棄証明書を作成し、税務署に提出します。
とはいえ、海外の工場に製造とその後の金型管理を委託している場合、あるいは国内でも
遠隔地の工場の場合、その工場の管理者に廃棄とその証明写真の提出をお願いする場合も
あるわけです。
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793 名前:70-431 投稿日:檀君紀年4338/04/01(金) 03:13:33 ID:0bKq7P1Q
さて、うちでもとあるグッズのために作った金型を廃棄することになりました。
ですが、ちょうどそのときマスターアップ間際で全スタッフを上げてのテンパイモード。
金型の管理をお願いしている工場は車で1時間かからない程度の距離ですが、誰一人として
工場に出向く余裕がありません。
このため、工場に依頼して廃棄と証明写真の送付をお願いしました。
数日後、郵送で写真が到着。担当者が不在だったので、私がとりあえず確認。
書類に不備はなし。念のため写真を……?
「……おんや?」
添付されていた写真に、どこか見覚えが。
半年ほど前に、別のグッズ用の金型を廃棄(そのときも、同様に工場に廃棄を依頼)して
いたのですが、その時の廃棄写真とまったく同じ写真が(汗
手違いで写真の添付を間違えたのかな、と思って廃棄の際の責任者に連絡を取ろうと書類
を確認すると……。
「廃棄担当:金田 正日」(仮名)
「立会人 :朴 金痴」(仮名)
…………。
これは、限りなく黒に近い灰色です。
というか、これを白と信じるには、私の心はキムチの赤に毒されすぎていました。
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794 名前:70-431 投稿日:檀君紀年4338/04/01(金) 03:16:42 ID:0bKq7P1Q
工場の社長さんは「仏の善兵衛」と呼ばれ、社員やその家族からも慕われる穏やかな人格者
なので、社員の2人が結託して誤魔化しをやったのだろうと目星をつけました。
とはいえ、いきなり電話で話したり、工場に乗り込むのも不味いので、事情は話さずに
社長さんの携帯にTEL。工場のそばの喫茶店で待ち合わせをすることに。
合流してから無理を言って来ていただいたお詫びと、呼び出した事情をかいつまんで説明。
その上で今回の書類と、前回の書類のコピーを社長さんに見せました。
それまでニコニコしていた社長さんの顔が…… 修 羅 に 変 わ り ま し た ( 涙
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796 名前:70-431 投稿日:檀君紀年4338/04/01(金) 03:18:29 ID:0bKq7P1Q
「申し訳ありませんが、工場まで同道いただけませんか?」
修羅の形相を一瞬で微笑に戻した社長さんの言葉に逆らえるわけもなく、一緒に工場へ。
工場に着くなり、社長さん、工場入り口に並べてあった工具類の中から
バ ー ル の よ う な も の を 右 手 に 確 保 。
そして
「 金 田 ! 朴 ! 貴 様 ら こ っ ち に 来 ン か ぁ !!! 」
今まで聴いたこともないような大声で怒鳴りました。
ちょうどお昼時で談笑していた工員たちがぎくりと動きを止め、工場内が沈黙に包まれました。
びくびくした表情で、工員達の間から二人がやってきます。
いかにも <丶`∀´>な顔をした二人組です。
社長さん、こっちに背中を向けてますが、二人の顔を見れば、どんな表情をしているかは予想がつきます。
「貴様ら、これは一体どういうことだ、説明してみぃ!」
書類を二人の顔に叩きつけます。
「本当に廃棄したのか! ああ! 昨日廃棄したならまだあるじゃろ! ここに持って来ンかぁ!!」
ガン!
バールのようなものを手近の作業台に叩きつけます。
分厚い木でできた作業台に派手にヒビが入ります。
ニダー二人ともガクブル状態。
「持ってこれないのか! ああ、そうだろうな! この薄汚い盗人がぁ!」
とたんにニダー、土下座して泣き始めます。
「金田に脅されてウリは止めようといったニダ!!!!」
「朴がいい売り先を知ってるからとウリを誘ったニダ!!」
そして合唱。
「「ウリは悪くない! 金田が/朴が 悪いニダqwせdfrtgyふじこlp;@」」
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799 名前:70-431 投稿日:檀君紀年4338/04/01(金) 03:21:52 ID:0bKq7P1Q
……その後、泣き喚く二人を社長室に連行して、事情を聞き出しました。
朴が知り合いの在日経営の金型会社の重役の縁戚で、そこに金型を売ればいい小遣い稼ぎに
なる、と金田を誘ったそうです。んで、金田は前回の廃棄の際の写真を盗み出し、書類を偽
造していた、と。
ちなみに、横流し前だったので、金型は金田の車の中から確保。その場で、金田&朴の手に
よって速やかに廃棄させました(ちゃんと写真に撮りました)。
その後、金田も朴も警察沙汰にしない代わりに即座に解雇。バールのようなものを手にした
社長に見送られ、私物をまとめて去っていきました。
さて、笑えないのが朴。この工場に来たのも、前述のように縁故入社(というか、この工場に
修行に出されていた)だったため、この悪事は先方の会社の知ることに。先方の会社内でも
何人か首が飛んだそうです。
先方の会社社長と重役はまともな方だったので、社長にはもちろん、うちの会社にもわざわざ
謝罪に来てくださいました。その上で、「金田と朴が何か問題を起こした場合、一族からの絶縁
も含めて、厳しい対応をするので、今回ばかりは勘弁していただけないか」とのこと。
うちもまぁ、実害がなかったので先方の言い分を呑むことにしました。
本音を言えば、これ以上関わりたくないし(笑
すぐさまケツの割れるような姑息な悪事を隠すために共犯を即座に売る連中の卑屈さと、
連中をウンコちびるほどビビらせる戦中世代の迫力を同時に目の当たりにした一幕でございました。
……というか、二人の供述中、ずっとバールのようなものを杖代わりにして、ニコニコ笑って
いる社長さんはマジで恐かったです。
途中でお茶を入れに来た事務の女の子は泣きそうでしたから(汗
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802 名前:70-431 投稿日:檀君紀年4338/04/01(金) 03:29:24 ID:0bKq7P1Q
以上、少々古い話で恐縮ですが、ニダー話でした。
その後も、この工場と社長さんとのお付き合いは続いていますが、ここ暫く新規のグッズ
ネタがない(新ソフトがイマイチなのが悪い!)ので、残念ながらお仕事はしてません。
はやいとこガンガン売れるソフトを作って、社長さんたちにもいい目を見せて差し上げた
いものです。